殺処分という業界が抱える深い闇――保護犬になる前段階での対処が必須
殺処分の減少がペット業界で、最も解決を急ぐべき問題であることは、もはや論をまたず、これまでも国政において、様々な対策が練られてきました。
しかし、民間人が肌身で感じるほどに、政府の財政限界は顕在化してきており、行政が実施できる政策も役割も、時代と共に、その範囲は、局所的、限定的なものへと変化してきました。
更に超高齢化社会を間近に控える昨今、社会保障が重点課題であり、ますます国政は困難な時代へと突入していくことでしょう。
また殺処分を回避するための受け入れ施設の飼育事情もひっ迫し、環境悪化も顕著化している事例もございます。その結果、哀れという他ない末路を迎える犬猫が、今なお後を絶ちません。
そのため、募金活動の多くは、こうしたひっ迫した保護施設や保護活動に対して行われることが一般的です。
もちろんそれらの募金も意味のあることで、私達には、それを否定をするつもりは毛頭ありません。
しかし、誤解を恐れずに言えば、犬や猫にとって、保護施設に収容された時点で、極めて「死」に近い、危険な状態にあります。
いわば、そこは生と死の境界線ともいうべき、「最期の砦」であり、私達が伝えたいことは、政治議論でもなければ、保護施設批判でもなく、本来は、犬や猫がそこに至る前段階で、その悲惨な末路を回避しなければならないという点にあります。
とりわけ、問題発生の原因ともいうべき、蛇口部分を閉めなければ、根本的な解決には至らず、キリがないと考えています。
これらの解決策として、私達は免許制度としつけの義務教育化を目指しているのです。
歯止めの効かない社会的ニーズ。ペット市場規模は約1.5兆円――コロナ禍においても堅調
コロナ禍においても、ペット市場は堅調であると言われており、2020年の犬の新規飼育頭数に関してはペットフード協会によると、46.2万頭(前年比14%増)にも及び、ペットホテルや、トリミング、しつけ教室等の様々な関連企業に恩恵をもたらしております。
また東洋経済新報社によると、ペットフードとペット用品を合わせた国内市場の規模は2019年度に4461億円(前年比5.5%増)で、ペットショップや医療等も含めると、すでに約1.5兆円にも及ぶとも言われております。(※)
今後も、日本においては、共働きで子供を作らない選択をされる方や、独身世帯、子育てを終えた高齢者の方々も、癒しを求められて、新規飼育を始められるケースも増加してくることでしょう。
確かにペット業界は、多くの利益を人々にもたらしてくれるに違いありません。
新たなビジネスの活路にもなることでしょう。
例えばペットを受け入れる側のサービス展開に関しては、今後、大きな利益がもたらされてくることが予想できますので、私達としてもこうしたサービスにご協力頂ける店舗様を増やしていきたいと考えております。
しかし、新規飼育数が増えると、何らかの対策を講じない限り、比例して、捨て犬・捨て猫の問題も、より深刻化していくでしょう。
今、飼い主と、業界の責任ある行動が求められているのです。そうでなければ、犬や猫にとって、痛ましい結果となるのは火を見るよりも明らかです。
つまり、ペットを捨てる飼い主様が依然として一定数存在し続けているという現実。
また、売れるから繁殖し続けるという業界。
この双方間によって、生じる負のスパイラルにアプローチをしなければなりません。
その最適解が、免許制度としつけの義務教育化にあると私達は考えており、大きくこれらのスパイラルを制限できると期しています。
他でもなく、私達、ペット業界に携わる人間から、決意の行動を起こしていかなければならないと思います。
※引用:東洋経済ONLINE
飼い主が愛犬を捨てる日――犬と人が出会った時から間違いは生じている
問題の蛇口部分
犬を飼う資格のない人々の安易な発想
犬と人が出会った時から間違いは生じている
飼い主が犬を捨てる決断をされる主だった理由は以下の通りです。
- ・これまではペットを飼えたが、ペット不可のマンションへの引っ越しが決まった。
- ・近所から、犬がうるさいとクレームが続いた。
- ・ご近所の方に嚙みついた。
- ・子供が出来て、犬アレルギーを発症した。
- ・飼い主様の高齢化に伴い、施設入居が決まった。
- ・飼い主様が先に亡くなってしまったが、誰も引き取ろうとしない。
- ・パートナーが飼っていたが、関係がこじれて、出て行ってしまい、後には飼い犬だけが残った。
- ・結婚したが、パートナーが犬を受け入れてくれなかった。
- ・犬の飼育がこんなに大変だと思っていなかった。
- ・想像していたよりも大きく育ってしまった。
これらの原因は情報や行動制限の不足です。
まず、自らが、「本来、犬を飼うことに絶対に適さない人物」だと自覚に至るために必要な情報の不足です。
また、犯罪歴のある方や、ネグレクトや虐待の経験のある方が、何頭、動物を飼ったとしても、何ら法的違法性はないという制限の不足です。
更にペット業界においても、売れ残った動物が、大量廃棄されている例も決して珍しくはありません。しかし、今なおペット業界は堅調なため、業界にも歯止めが利きません。
これらが、私達が考える蛇口部分なのです。
免許制度としつけの義務教育が実現したらどうなるの?
この免許制度としつけの義務教育こそが、私達は問題の蛇口部分にアプローチできる方法であると考えております。
免許は言うまでもなく、飼い主として適さない人物――つまり愛犬を自己本位に捨ててしまうような人には交付されません。
海外の例の様に、完全に免許制度が導入されれば、そうした心無い飼い主と、犬が出会う、不幸なミスマッチは大きく制限されると推測されます。
もし非合法的に、犬のしつけから免れ、無免許で犬を飼う人が現れたとしても「無免許で犬を飼う方がデメリットが多い」と、全員が実感できるような、足並みのそろった社会になれば、問題はその根本から大きく改善されていくに違いありません。
捨て犬の母数が減れば、当然、保護施設にも余裕が生まれ、飼育環境の改善も期待できます。
私達はそんな犬にとっても人にとっても豊かで幸せな未来を創っていきたいと考えているのです。
また、飼い主様にとっても嬉しい社会になるのが、この制度の良いところです。
例えば、ペット同伴可と明示的にされているサービス以外、「ペットは不可である」というのが、日本社会の暗黙の了解です。
こうした事情を弁えずに、いきなりペットと共に、会社に出社したならば、恐らく、特別な事情でもない限り、上司の方々から叱られることでしょう。
また散歩の途中に飲食店に立ち寄って、そのまま店内に愛犬と一緒に入ろうとすれば、固くお断りされるに違いありません。
「なんと常識のない飼い主だろう」と、白い目を向けられ、非常に肩身の狭い思いをすることでしょう。
しかし、免許制度としつけの義務教育が実現したならば、ペットと共に受けられるサービスが、どんどんと充実してくることになります。
これまではペット不可だったレジャー施設や、店舗様、また賃貸マンションにおいても、例えば、義務教育課程を通過し、免許を保持している賢い飼い犬であれば、サービスを一緒に受けられる、といった条件付きでの受容が可能となるのです。
そんなふうに、私達の活動においても、「その条件ならば犬を受け入れてもいいよ」と仰って頂ける協力店様の募集も推進してきました。
義務教育によって、犬のしつけが広く行き届けば、無駄吠えをする犬もいなくなり、近隣住民からのクレームも少なくなるでしょう。
もっともっと犬という存在に理解の目が向けられるようになり、飼い主様と飼い犬にとっても、より豊かな未来が生じます。
協力店となるメリットは?
飲食店の例を出せば、例えば、お子様ランチという食べ物があります。
大人の夫婦だけでなく、明示的にお子様へのサービスも前面にアピールすることにより、消費を喚起することができます。
お子様の笑顔を見れば、当然大人も嬉しくなるもので、またサービスを利用しようという気持ちにもなります。
これまでは、ペット関連業界だけがターゲット層としていたペットに関しても同様です。
例えば、飼い主だけでなく、ペットも一緒に食べることのできる飲食店をイメージしてみてください。
平たく申し上げますと、本来はご家族だけの消費に留まっていたところに、ペットの分の利益も上乗せされるわけです。
これはホテル施設やその他のレジャー施設においても同様のロジックになります。
思わず、買ってしまいたくなるようなペット用品を、店内に並べて置くことも、素敵なアイデアです。
現在、まだまだペット同伴可のレジャー施設や店舗様は不足している状況にあり、更に新規飼育数も増える見込みでございます。
そうした背景から、これまでは考えることもなかったことかもしれませんが、ペットを受け入れる可能性も是非、視野に入れてみてはいかがでしょうか。
是非一度、私達一般社団法人おいでやDOG協会までご連絡下さい。
免許制度と義務教育が実現するデメリットは?
飼い主として不適当であるとされた方々は新規飼育を諦めなければならないため、ペット業界全体の売上が縮小する可能性もございます。
また犬を飼うということは、費用もかかりますし、散歩のお時間も必要となります。
そうした事が免許を取得する際に、はっきりと具体的に示されることによって、やはり飼育をするのはやめておこうと考える方も増えることでしょう。
ペットショップやブリーダーの皆様にしてみれば、思わず反対したくなるような施策かもしれません。
しかし、本来、犬や猫の幸福を考えた時、飼い主も生まれる場所も選ぶことはできず、無計画な交配や飼育にさらされた結果、不幸な末路に至った命は多数ございました。
生活のためと言えど、いつまで、こうした闇を業界は、抱え続けなければならないのでしょうか。
私達の様にペットに携わる業界の側から、自制していかなければなりません。
またそもそも犬が嫌いだと考える方々にしてみれば、いつも行っていた馴染みの店舗で、ある日を境に犬が飼い主と一緒に訪れるようになったとすれば、悪夢に違いありません。
このように、犬を飼育していない方々への深い配慮が必要となります。
こうした様々な課題を一つずつ解決していくため、私達はイベントや交流会を通じて、啓蒙活動を推進すると共に、様々な方々とのナレッジ交換を行い、実現可能性の高い議論を深めていきたいと思っております。